飛行機に乗る金も、新幹線に乗る金も、今の自分には十分にあったし、

限りある時間を、呑気に消費している暇があるわけでもなかった。


けれど、僕はわざわざ、バスに乗り込んで夜を跨いだ。



あの日と同じ乗り物で帰らなければ、あの日の続きは訪れないような。

そんな気がしたから。



浅い眠りの中に、甲高い声のアナウンスが進入する。


僕は、到着を知らせるその声に目蓋を開けた。



まだぼやけたままの視界を呼び起こすために、カーテンを開ければ、

我先にと差し込む光が目蓋を刺激して、僕の脳を一気に動かす。



光に慣れた目で、その眩しさの向こうに目をやれば、懐かしい景色との再会が僕を待っていた。



――あぁ、帰ってきた。