「……いや、違うから」


この類のやり取り、ここ何年もの間、腐るほどしてきたものだから、もういい加減うんざりしている。


それでも、僕の内心などお構いなしに、新橋はこの話題を続けていく。


自分の表情を自在にコントロールできないポーカーフェイスは、こういう時、実に損であると再認識させられる。



「じゃあじゃあ、社長はどんな人がタイプなんですか?」

「無邪気で寂しがり屋な奴」

「えー意外!そういうタイプ、苦手なのかと思ってましたー」


新橋は、大げさな手振りをして、驚いてみせる。

僕が素直に答えたものだから、調子に乗ったのか、新橋はまだこの話題に乗りかかってきた。



「社長社長!私、無邪気な寂しがり屋ですよー」

「必要以上に喋らない、芯の強い女がいい」

「……」


さきほどベテラン社員を一撃で黙らせていた、新入社員の真似をして、僕は言葉を返してみた。



「新橋、残念だったなー。あんまり喋んないようにしないとな」


間髪いれずに、佐倉の鋭い突っ込みが入る。


新橋は、やっと懲りてくれたのか、佐倉のヤジにも答えることをせず、何処かへと去っていった。



僕は、嵐が去ったことに、ホッと一息つこうとしたが、

隣では相も変わらず、興を孕んだ視線が送られたままであった。