ようやく卒業生が退場し、体育館の片付けが始まった。

俺は父親と話す母親たちに近付く。

話を盗み聞きしてると、灯はどうやら、春・徹・朔太郎を連れて、珀の卒業式に行ったみたいだ。

何となく珀の卒業式とはわかってたけど、兄貴を思えば、タクシーか電車で行って欲しかった。



「出よう。もう卒業生の花道を作らないと」



俺は母親たちを体育館から出し、校門へと向かわせた。

兄貴がどんな言葉を生徒に送り、優香がどんな言葉を送られたかは、わからない。

でも、素敵な思い出になって欲しい。

俺は空を見上げながら、優香と優太の両親に、“無事に卒業しましたよ”と、報告した―――……。