料理をする母親と優香の姿、親父がリビングで「愛してるよ」と母親に伝えてる様子が瞼の裏に浮かぶ。



「…この家で、また飯を食いたかった…っ…」



俺はソファーに残されたままの、両親のセーターを抱き締めながら、灯の前だというのに、涙を流してしまった。

灯は俺を見て見ぬフリをして、ベランダへと出て行く。



「勿体ないよね、このままじゃ」



灯は「んー」と言いながら、ベランダを行ったり来たり。

俺は涙を拭い、優香を起こしに行く。

起きた優香は、「ここが一番、落ち着くね」と、子供みたいに、俺の胸で泣き始めてしまった。