優太が携帯を閉じながら入って来る。



「…はぁ。こんな事を言っては何ですな、やっぱ他人が家族になるのは、無理だったのかも知れないですね」



優太の言葉に、母親は「そんな筈はないわよ!」と、泣きながら叫んだ。

優太は「これから実家に行きます」と、リビングを出て行こうとする。

私が「ちょっと待って!」と呼び止めると、「ん?」と、振り返って来た。



「実家って、前の家だよね?もうないんじゃない?」



「手続きをしないと、明け渡すって話だったけど、優香が相続税を払ったから、マンションはあのまま」



優太は「鍵、鍵…」と、二階へと行ってしまう。