首を傾げた俺に、「樹、知り合い?」と、優香が訊いて来た。

俺が「全く」と返すと、斗真が「まぁ、仕方ないですね」と言った。



「一回しか会ってないし、俺は高石ータカイシーにキレられてたし」



…高石…高石…。



「…………熊澤ークマザワーか?」



「はい。正解です」



―――熊澤斗真。

俺が最後の教育実習に行った高校の生徒。



「お前、彼女とどうした?」



高石先生に怒られたのは、無断欠席って事もあるが、熊澤の彼女が俺に惚れて別れそうになったから。

女にフラれるのは、プライドが許さないらしい。