「その希望は、我らが待ち望んだ救世主に委ねられた!」

長老の叫びに呼応するかのように、雷鳴が轟き…空中にいた烏天狗達を焼き切った。

「な、な、な…何!?」

ドキシは震えながら、振り向いた。

「これ程の魔力…あり得ん」

「……モード・チェンジ」

赤ん坊を抱いている母親のそばで、剣を天に突き上げたティアナが、呟くように言った。

瞬きの時。

それくらいの一瞬で、家屋に巣くっていた口の魔物が、全滅した。

「ば、馬鹿な!」

ドキシの周りで、地上から雷が発生していた。

「認めん!」

ドキシの全身から、針が発射された。

「今度は毒入りだ!」

「きゃっあ!」

逃げる間もなく悲鳴を上げる人々。

「おおっ!」

長老だけが、歓声を上げた。

無数のティアナが一瞬で、すべての針を斬り落としたからだ。

それは残像であった。

そして、そのあまりの速さ故に、剣から衝撃波が発生し、四方八方からドキシを切り裂いた。

「な!」

傷だらけになり、その場で崩れ落ちるドキシ。

自慢の羽も、六本の腕も斬り裂かれていた。

「空の騎士団である私が…人間に負ける?」

倒れたドキシは前に立つティアナを見、

「違う!人間に負けたのではない!その武器だ!その武器に、私は負けたのだ」

よろけながらも立ち上がった。

「人間などに負けるものか!」

その言葉を聞いたティアナは、剣を地面に突き刺し、丸腰でドキシに向けて歩き出した。

「…」

ティアナは目を細め、ドキシを睨む。

「やはり…人間は…」

ドキシは、にやりと嬉しそうに笑った。

「愚かだ!」

ドキシの突き出した尻から、巨大な針が飛び出した。

「死ね!」

尻を前に向けようとしたドキシの視界から、ティアナが消えていた。

「え」

ドキシの頭上を舞うティアナ。

後ろに着地すると、突き出した尻を力づくで曲げ、ドキシの背中に向けた。

「そ、そんな…」

放たれた針は、ドキシの背中から胸を貫いた。

「馬鹿な」

2、3回ふらついた後、真横にドキシは倒れた。