――春休みに遊びに来ないか―― 東京に住む叔父からそう誘われたのは、3月に入ってすぐのことだった。 「うちの母がね、きみに会いたがっているんだ」 「私に?」 叔父とは、亡くなった私の父の、実の弟だ。 その母親ということは、私にとっては父方の祖母になる。 「断られたらそっちまで押し掛ける勢いで、そうなったら誰にも止められない」 どうかな、と問う叔父の口調には、苦笑いが滲んでいた。 「ご迷惑でなければ」 私がそう答えると、叔父はほっとしたように息を吐いた。