「――…あの…」




桐島ちゃんが、スッと手を上げた。




「なんだ?」




犯人は桐島ちゃんに銃口を向けた。




「トイレに…行きたいんですけど…」




犯人は時計を見ながら舌打ちをした。




「少し我慢しろ!」




「もれそうなんです…!お願いします…」




桐島ちゃん、演技上手いなぁ…。よーしっ!あたしも!




「あっ、あたしも!もれちゃいそうです!!」




あたしは素早く立ち上がり、犯人を見た。




すると犯人は仕方なさそうに項垂れた。




「……よし。行け」




犯人はあたし達を前に歩かせながら、銃口を向けてくる。




ロビーを離れ、トイレに向かう。



まったく人がいない。




よし…
そろそろだな。




あたしの前には桐島ちゃんが両手を挙げながら歩いてる。




あたしの後ろには犯人。




トイレ前に着き、角を曲がろうとした。




――今だっ!




あたしはサッ!と、勢い良くしゃがみ込んだ。




――バキッ!!




すると桐島ちゃんは挙げていた片手を後ろに振り上げると、銃を持っている犯人の手を殴った。