そして、床に落ちた男が持っていた銃を遠くまで蹴り飛ばした。
「なっ…何しやがる!この女っ!」
男は怒りを露にすると、あたしに向かって襲いかかってくる。
あたしはパンチを上手く避けると、腰に差してあった警棒を勢い良く引き抜き、男のみぞおちに打ち込んだ。
「…く……っ…」
男は苦痛に歪んだ声を漏らすと、床に倒れ込んだ。
「ふっ、あたしをなめないでよね」
あたしは男を伏せさせ、手錠をはめようとした。
――その時。
――ザンッ!
「―――っ!」
あたしは思わず手を引っ込めた。
右手に鋭い痛みを感じ、見てみると血がダラダラと流れ出ていた。
チッ…やられたか。
あたしとしたことが…
「ふっ…ふふふ!武器は銃だけかと思ったかい!?」
男の手には刃渡り15㎝ほどのナイフが握られていた。
「エ、SPなんか怖くないぞ!お前らなんかただの政治家のお飾りなんだからな!」
男は優越感を感じたのか、余裕の笑みを浮かべる。
ウザ…
何がお飾りだよ。
テメェに言われたくねぇよ。
「お飾り…ねぇ。あんたよりはよっぽどマシだと思うけど」
あたしは斬られた手を持っていたタオルで止血すると、真っ直ぐ男を見構えた。

