「二宮水樹…か。」
緒方さんはボソッとあたしの名前を呟いた。
「へっ?」
あたしは不思議に思い、声を漏らした。
「あ、いやごめん。名前だけ聞いてた時はてっきり男かと思ってたからさ。SAT隊員だって聞いてたしな」
あ、そーゆうことね!
「よく言われるんですよ〜!名前だけだと男に間違えられます!」
これはホントなんだよね。
特殊部隊にいた時も、初めはそうだったし。
まぁ兄貴が2人とも“樹'が付くから、あたしにも付けられたっぽい話をおかーさんから聞いたことあるけど…
「そうか。すまなかったな」
「いえいえ〜気にしてないんで!」
あたしはニカッと笑った。
「ありがとな。よし、着いたぞ」
緒方さんは署の駐車場に車を止めた。
「ありがとーございましたっ!乗せてもらっちゃって」
「気にするな。上司なら当たり前の事だ。」
緒方さんはニッコリ微笑むと、署の中に入っていった。
「――水樹?」
後ろから大好きな愛しい人の声が聞こえた。
「潤っ!」
うそ〜偶然〜!
今会えるなんて!!
「潤も今来たの?」
「あぁ。つかさ…さっきの男、誰?」
潤は不機嫌そうに顔をしかめた。
うっ…
み、見られてたんだ。
潤…怒ってる…?
「あ、あの…」
「てかなんで俺以外の男の車乗るわけ?」
潤はジリジリとあたしに詰め寄ってくる。
気付けば、あたしの背中は駐車場の冷たいコンクリートの壁に追いやられていた。