「うーん……」
私は口を濁す。
けれど、高木は軽い調子でこう言った。
「オレ、普段『奏真』って呼ばれてるから、名字とか慣れなくてさ」
それを言えば、私も『沙織』なんて親からでもめったに呼ばれないのに。
「だから名前で呼んでよ!ね?」
うう……。
私はものすごく困っていたけど、つい根負けして分かったと言ってしまった。
「やった!じゃ、呼んでみて?」
「何でだよっ?」
「いいから、ね!」
私はヤツの期待に満ちた目線から逃げる様に目を逸らす。
「……そっ、奏真」
「うわ、かなり嬉しいかも!」
そんなくらいで喜ばれると、苦手に思っているのが悪く思えてしまう。
こんな風に2人でいたりすると、また克幸に怒られるんだろうか。
けど気にする事ないよな。
だって無視してんの、克幸の方だし。
「沙織ちゃん、もう一回行こっか」
「オッケ!」
そして私と奏真は、いくつかのゲームで一緒に遊んだ。



