「なぁ、さおはさ」
気まずくなった空気の中で、克幸がポツリと言葉をもらした。
「イヤだった、か?」
「……え?」
何が、と聞こうとした私は克幸の困ったような顔を見て口をつぐむ。
聞けるような雰囲気じゃない。
というより、何のことを差しているのかはなんとなくわかった。
「イヤだとかそんなの、考える間もなかっただろ?」
「そっかもな」
突然で、強引で。
今考えると、一瞬すぎて分からなかったというか。
って、何考えてんだ私は!
思わず顔が熱くなる。
そんな私の頬にひんやりとしたものが触れた。
「熱いな」
「―――なっ?」
驚きで、コントローラーが手からこぼれる。
克幸の手は私の頬を冷やすように触れると、顎に指をかけて止まった。



