オリオールの乙女


「……?」

ノエルはゆっくりとドアを向いた。

「……」

ドアの向こうから、声がしない。ノエルは不審に思い、ベッドからゆっくりと下りて、足音を立てずにドアに近づいた。

一歩一歩近づくにつれて、ノエルは心臓がどきどきと強くなるのが分かる。
ドアの向こうにいるのが給仕の女ではないことだけ、確信が持てる。

ノエルはドアノブに手をかけた。
一度大きく息を吸い込むと、意を決してドアを思い切り開けた。

しかし、そこには誰もおらず、目の前には廊下の壁の美しい女の絵が、こちらに微笑みかけているだけだった。

ふと足元を見ると、ココットがあくびをしてノエルの足に擦り寄ってきたところだった。

ふう、とノエルは緊張がほぐれたように息をついて、再び部屋に戻った。

すると振り返ったとたん、彼女は固まってしまった。そこに、彼女を見つめる人影があった。