オリオールの乙女


時間がない。先に動くか、それとも先回りをされるか。
先を越されたら最後、バルバラは真っ先にノエルの命を奪い、この国を手におさめるに決まっている。

ベッドの上に座り、ノエルは膝を抱いて毛布にくるまっていた。
星すらも見えない。夜空は、真っ黒なキャンパスのように、ただ黒く塗りつぶされてしまったみたいだった。

ただただ静かだった。今夜は、静寂すぎるほど、夜そのものが眠っているかのように思えた。

気の流れというか、エネルギーというか、大地の息吹のようなものも感じることができなかった。

ぱたりと呼吸そのものをやめてしまったかのように、全てが無に近かった。

だからこそ、ドアがノックされたときは、ノックの音が直にノエルの耳と心に響いてきたし、この夜に起きているのが自分ひとりだという錯覚から目が覚めた気分だった。