オリオールの乙女


その赤い粉に、見覚えがあった。
母ディディエを殺した毒の粉と同じものだったのだ。

ノエルは、給仕たちが床を綺麗にするのを見ながら、呆然と座り込み、ココットを抱きしめていた。



とうとうバルバラのターゲットが、ノエルに向けられた。

しかしこの城に逃げ場などなかった。まるで捕らえられたねずみのような気分だった。

窓から空を見上げる。だが、今日は月が見えない。新月だ。闇がすっぽりと月を隠してしまったようだ。