自室で昼食をとっていたノエルの元に、ココットがやって来て、甘えるように彼女のひざで丸くなった。
「ココット、お食べ」
ノエルはピケの実をココットに差し出すと、それをガリガリと美味しそうに食べ始めた。
ノエルが食べている間、給仕の女たちは静かに部屋の隅にいる。
ノエルのグラスの水がなくなれば、彼女たちはすぐに水を注ぐし、別に仕事がなければ、こうしてだまったまま立っている。
カチャカチャとノエルのシルバーのこすれる音だけがする。
「そういえば、マーレの姿がないわね」
ノエルに一番近い給仕のマーレがこの場にいないのは珍しいことだった。今朝はボドワンさんを部屋に通しにやって来たはずだ。
給仕の女たちは、少し顔を曇らせて何も言わなかった。ノエルは不思議に思った。

