彼はハットを片手で持ち上げ、愛想よく微笑みかけてきた。ノエルはすぐに彼が分かった。
「ボドワンさん!」
彼はルカッサ一の大時計台の管理人のボドワンだった。ノエルは、嬉しそうに笑った。
「いやはや、あの時いらした麗しい少女がまさかプリンセスだったとはのう」
ボドワンさんは口髭を撫でた。
「わざわざ……どうして?」
「シャルロワ城の時計が壊れたと聞いてな。修理しに来たのだよ」
ノエルは、本当は聞きたいことが山ほどあった。そして、何から聞けばよいのか分からなかった。
ルカッサの人たちのこと、街のこと、そして……。

