「ねえ、さっきの光景を見た?何とも思わないの?」
ノエルの言葉を聞いた衛兵は、首をかしげた。
「何か、おかしなことでも?」
ノエルはそれを聞いて呆然とした。
「何って、見なかったの?あの花屋の息子よ。イヴァン出身の!」
「花屋の……ああ、マルコヴィッチのことですかな。彼が何か……?」
ノエルは、何も言えなくなっていた。さっきの奇行は、きっと彼らには見えていなかったのだ。
彼女が部屋へ戻ろうとすると、衛兵は思い出したように言った。
「そういえば最近、彼は花を届けに来ないなあ。病気にでもかかったのだろうか」

