オリオールの乙女


少し年季が入っていて、ページの端が日に焼けている。
懐かしいような、古びた匂いがページをめくるごとにノエルの鼻をくすぐった。

ちょうど巨人たちがトリヴ人の黒魔術によって、朽ち果てていく場面だった。

「俺も、行ってみたいな」

ギルがぼそりと呟いた。
ノエルが驚いて彼を見上げると、初めて見る、ギルは温かい表情をしていた。

「オリオールにさ。お前のペンダントがあれば行けるんだろ?」

そう言うと、彼はノエルの胸元でぼんやりと光るペンダントを手にした。

「行けないわけがないさ」

もう一度確かめるようにギルは言った。

「バルバラだって、こいつを狙ってる。な?」

ギルの強くて真っ直ぐな言葉が、冬の長い眠りについたように冷たくなってしまった彼女の心臓を、ゆっくりと溶かそうとしていた。

ノエルは頷く代わりに、ほんのり温かい手をペンダントとギルの上に重ねた。