オリオールの乙女


天空は群青色のマントを纏い、散りばめられた星の中央で月だけが煌々と浮かんでいる。

「ダメね。分かってるの。でも……ギル……」

ノエルは、両手で顔を覆った。ギルは、ただ黙って話を聞いている。

「このペンダント、私が持つ資格はある?

いっそアルドネ海に投げ捨てて、ミルバの餌にでもなればいいって何度思ったことか」

「何言ってんだ。お前だからこそ、与えられたんだろう」

「でも……」

すると、ギルは懐から一冊の絵本を取り出した。
ノエルは鼻を真っ赤にさせて、その本を見つめた。

「この絵本は?」

「オリオール神話だ。お前が嬉しそうに話すから、俺も読んでみたんだ」

そう言って、ギルはぱらぱらと本をめくった。

「俺はエルタニンの出だから、こんな話ちっとも知らなかった」

ノエルが、ギルの手元の本を覗き込むと、そこには幻想的かつ特徴的で端的な絵が、水彩で美しく描かれていた。