「ギル……どうして?何故?」
「ノエル!目が眩んだか!よく見てみろ!!」
すると、確かに母親だった女が、黒装束にすっぽりと納まった醜い老婆へと変貌した。
老婆は悔しそうに顔をゆがめると、皮だけの腕を伸ばし、ノエルの腕を掴んだ。
「イヤッ!」
ノエルはとっさに払い除けたが、老婆は力が強く、長い爪がノエルの白い肌を深くえぐった。
「痛い!やめて!」
「こっちへおいで……こっちへ来るんだ……」
老婆は首を絞められたような、金切り声でそう言った。ノエルは全身に鳥肌がたった。
「嫌だ……もう一人ぼっちは嫌だ……」
老婆のぽっかりとあいた空洞の目が、悲しげにゆがんだ。
老婆が弱弱しくうつむいた瞬間、ボッと緑と紫の煙が辺りにたちこめ、老婆の姿が一人の女の姿に変わった。
「バルバラ!!」

