ディディエの息が、とぎれとぎれになってきた。彼女の細く、白い腕が力をなくしたように、がっくりとした。

「いや!母上!」

ノエルは、彼女の手をとった。周りを囲む医師らは、静かに首を横に振った。

「ノエル……私の愛しい子。お前を……信じているわ」

ディディエは最後に、ノエルの額にキスをした。

ノエルは、涙を流しながら、母が静かに目を閉じるのを見届けた。
まるで絵画のような、美しい母の、最期の寝顔だった。

ノエルにとって、それを一生忘れることのないだろう、最愛の人の死になった。