「こいつさ、世間知らずで何も知らないんだ。ちょっと時計台の中見せてやってよ」
それを聞いたノエルはむっとした。
「ギル、世間知らずとは何よ。私だって、そこらへんの女の子よりずっと色んなところを見て知ってるわ」
「ハイハイ。しょうがないな、お姫様は」
そのやりとりを見て、ボドワンさんは目を細めて笑っていた。
「仲の良いお二人さんだ。構わんよ、自由に見てやってくれ。こいつも喜ぶだろう」
時計台の中は空洞で、いたるところで大中小の歯車がゆっくりと回転していた。
時計台の中心にある立派な柱を軸に、螺旋階段がはるか高くまで連なっていた。
吹き抜けの時計台の壁には、沢山の窓があって、心地よい光と風が中に降り注いでいた。
「こっちだ」
ギルがノエルの手をひいた。螺旋階段から伸びた渡り階段が、歯車の裏の隠れ部屋に続いていた。
「これが俺の寝床さ」
小さいスペースだったが、そこには古びた本が数冊、着替え、枕や毛布がまとまって置いてあった。

