オリオールの乙女


言い表せぬ禁忌のようなもの、人間が触れてはいけないといったものが、彼らをよりうっとりとさせた。

「よう」

ふいに聞こえた男の声が、ノエルをどきりとさせた。

振り返ると、なんと昨日の青年がそこに立っていた。

「……!」

ノエルは目を丸くさせて、ぱちくりとしていた。彼はそんなノエルを見て、笑い出した。

「あはは!何だその反応は。想像以上だ」

「だって……どうしてここへ?」

「俺はルカッサで知らないところはない。もちろん、お前よりもな」

彼は得意げに言った。確か昨日も、路地裏を縦横無尽に駆け回っていたっけ。

ノエルは、思ったよりも早い彼との再会に喜んでいた。

「お前、実は案外トロいんだな。俺がついてきたことにちっとも気付きやしない」

彼は相変わらず真っ黒い瞳でノエルをとらえた。
この中は、声がよく響く。そう言えば、ここで声を出したのは初めてだった。

「すごい空気だ」

彼はそう言うと大きくのびをし、そのままごろんと床に転がってしまった。

「ワドレーヌ大聖堂か。いけない香りがぷんぷんするぜ」

ノエルは黙って聞いていた。