一般には許されていないワドレーヌ大聖堂の奥を、王族であるノエルは許される。
壁の壁画、神獣たちの彫刻、天井の天体画ひとつひとつがノエルの胸をくすぐりっぱなしだ。神聖な領域を、裸足で歩くのがノエルの掟のようなものだった。
かつての古人たちの息吹や心の奥まで、足の裏から伝わってきそうだった。
実は、この大聖堂は奥深い。そして暗かった。冒険が大好きなノエルも、中間地点まで来るのが精一杯だった。
奥には聖人としてあがめられたジュディート女王が安置されているという。
ノエルは持ってきたランプを置くと、石の床に腰を下ろした。
ここは大聖堂の奥の禁じられた部屋だ。誰も来るまい。こんなところへ来たがるのは、きっとプリンセスだけだ。
やっと開放感が体中に満ち溢れる。
広く吹き抜けた部屋は、洞窟と言った方がしっくりくる。
あちこちには巨大な石柱がそびえ立っていた。ノエルの下には、巨大な魔方陣が書かれていた。
宗教の儀式で使われていた部屋かもしれない。
ルカッサにはまだ解明できていない秘密や歴史が沢山眠っている。オリオール神話もその一つだった。
しかし、ルカッサにその謎をしつこく解き明かそうとする者はほとんどいなかった。
ルカッサに腰を据えた彼らは、この言い伝えや遺跡などが神秘的であればあるほど、満足したからだった。

