実験台となった女は泣きながらその薬を飲み干した。自分にも必ず死が訪れると確信していた。しかし、彼女は死ななかった。
それどころか、飲んだ瞬間、平凡な容姿がみるみるうちに絶世の美女へと変貌したのだった。
バルバラは嬉しさのあまり地下から飛び出すと、城内で狂ったように笑い出した。
手にした大量の白い花を、勢いよく空中に放った。白い花は、赤い絨毯の上に美しく舞い落ちた。
「これであやつの時代は終わる!これからは私の時代よ!」
バルバラの奇行を、召使いたちは寄り添って見つめていた。傍観者はみな気味悪がっていた。
赤い絨毯の上で散乱した花はクララ。葬儀に用いられる花だったからだ。
◇
「真実へ導いてくれる……」
ノエルはそう呟きながら、母に貰った首飾りを撫でていた。
彼女は今、城を出てすぐの大聖堂へと来ていた。
ワドレーヌ大聖堂。およそ2000年前に作られた、神秘的な大聖堂だ。
今は使われていないが、観光客は必ず足を伸ばす場所だった。
ルカッサの音楽も聞こえてこないほど、しんと冷たく静まり返っている。寂しさが、この大聖堂をよりいっそう美しく引き立てているようだった。

