「ルカッサの女王はもちろん、その姫君も美しいと聞いていたが、想像以上でした」
レイジェスは、青い目をうっとりさせた。ノエルは何も言わず、プリンセスらしく口角を上げたままだった。
オーケストラがテンポよく音楽を奏でる。ダンスホールの中では、ワルツを皆が優雅に踊っている。
ノエルも、音楽に身を任せてワルツを踊っていた。息苦しいドレスも、背筋をぴんと張ればそうきつくない。
「美しきプリンセス。顔を上げて。僕を見て」
目を伏せていたノエルは、無意識にレイジェスを見つめ返した。濡れたような睫毛と瞳が、シャンデリアできらきらと輝いた。
レイジェスは、満足そうに微笑んだ。でも、ノエルはまたすぐに顔を伏せた。
「プリンセスノエル、ケールニアにおいで。僕は貴族の血筋だし、名門アルタミーノ校の博士号も持っている。あなたにふさわしいと言える男だ」
いつしか二人は、ワルツの中で立ち尽くしていた。
「ねえプリンセス」
レイジェスはサファイアのような瞳でノエルを覗き込んだ。ノエルはうつむいたままだった。
「……ごめんなさい」
ノエルはとっさに早足でその場を去った。黄色のドレスをひるがえしながら。置いていかれたレイジェスは、ノエルの背中を見つめることしかできなかった。

