「みな、静粛に!」
小柄で、髭をたくわえた司会者が言った。ゆったりと流れていたオーケストラの演奏も止んだ。
「オホン!本日は、わがルカッサ王国女王、ディディエ様のご生誕の日にございます!」
彼がそう言うと、ワッと拍手が湧き上がった。その拍手を、ディディエは高く設けられた座椅子から微笑んで受け止めた。
「本日お越しくださったケールニア共和国、マルセル王国、そしてイヴァン帝国の方々に深く感謝いたします。みな、今日の良き日に乾杯」
ディディエが美しい声色でそう言うと、百十数名が一斉にグラスを掲げた。そうして、指揮者のもと、オーケストラがまた優雅な音楽を奏で始めた。
「母上、お誕生日おめでとう」
座椅子までの階段を駆け登って、ノエルはディディエに抱きついた。
「ありがとう、ノエル」
ディディエは、頬をピンクに染めてノエルを抱きしめ返した。
「……あら?」
ノエルの顔を見たディディエがそう言った。

