「ちょっと!お兄ちゃん、何を勝手に…「そうだ!」



バン、とテーブルを叩いて立ち上がった彼女を完全にスルーして。



「さっきから気になってたんだけど…」



お兄さんは不思議そうに俺を見つめた。



「“浅海さん”って呼んでんの?」


「……え?」


「だから、風歩のこと。」


なんだろ?急に…

とりあえず、頷けば…



「俺の前だから、とかじゃなくて?いつも?」


「ハイ。」


「なんでっ?」



なんで、って言われても…


最初からそうだったし、
別にこれと言って理由はないんだけどなぁ。

首を傾げて考える俺に、



「おかしいだろ?」



お兄さんは声を上げた。



「名前で呼べよ。つき合ってんだから。」


「でも…」


「つーか、名前にしてくれ。頼むから。」



“お願い”されてる?

なんで、そんなにこだわるんだろう?



「……俺も“浅海”なんだよ。」


「へっ?」


「だから…

お前に“浅海さん”って言われると…なんかすっげーこそばゆいのっ」



……そういうものなの?



「今日から名字禁止!
“兄”命令だぞ?わかったな?」



よくわからないけど…

俺、お兄さんに認められたってこと……だよね?