「……あ。そう言えば。」



大事なことを思い出して、彼女の身体をそっと離した。



「……?」



顔を上げた彼女は……うわっ。これはヤバイ。


なんで、そんな真っ赤な顔でうるうるしてるわけ?


さっきのが、図星すぎて恥ずかしかったから?


それとも、俺が強く押し付けすぎてた?


……まぁ、いいや。


おとなしくしてるうちに、すましちゃおう。



「ご褒美、まだだったよね?」


「……え?」


「頑張って、ここまで走ってきた“ご褒美”。」


「はっ?」



訝しげに俺を見る、その瞳に近づいて……



「なっ……」



やさしく、唇を重ねた。


今日、初めてのキス。


やっぱり気持ちいい。



「もう一回、させて?」



ねだるように見つめて、ゆっくり顔を近づけていく。





今までだったら、

彼女は完全に固まって、“動けない”状態でそれを迎えるんだけど……



「………。」



徐々に縮まる距離。

それに比例して、ゆっくりと閉じられていく瞼。




唇が重なったとき、


確実に、


彼女は俺を受け入れている。




「……進歩、だよね?」