「大体、なに罪のない人を捕まえようとしてんのよ」
「だってあいつ、部費をネコババしてんだぞ!?」
絶対違うだろう、というまともな意見はこいつには通用しない。
どうしたものかと首をひねっていると、部長が空也の手の届かない距離から言ってきた。
「ありがとう、三枝!」
「当然」
上司の失敗を補うのも部下の仕事なんで。
「俺、部に行ってすぐ事情を話してくるよ。そしたら何かわかるかもしれないし」
「うん、よろしく」
さすがサッカー部。
あれだけ言いがかりをつけられて酷い目に遭わされたというのに爽やかだ。
部長の周りだけ風が吹いていそうだよ。


