栗がにかっと笑って提案する。
「だったら、嵐に手伝ってもらえばええとね」
そうだ、頭脳明晰な嵐さえいればこの仕事だってすぐ終わるんじゃないか。
期待と希望をこめて、数学の教科書に目を落としている嵐を見つめると、
「馬鹿馬鹿しい。自分の仕事ぐらい自分でやれ」
こちらを見ることもなく冷たく切り捨てられた。
やっぱりね、そうだろうとは思ってたよ。
「はいはい、わかりましたよ」
さっきの空也みたいに口をとがらせて、電卓と向かい合う。
すると、いきなり誰かに後ろから抱きすくめられた。
「樹!俺手伝ってやろうか」
どうやらこの腕の正体は空也らしい。
確かに今は猫の手も借りたい状態だ。
でも…。
「大丈夫、一人でやる」
正直言って空也の手って、猫以下なんだよね。


