「あ、イッちゃんだぁ」
私をイッちゃんと呼ぶのはあの子しかいない。
「そろそろその呼び方やめない?なんか恥ずかしいし…」
「そんなこと言わんでおくれよ。だいじょぶ、かわいいべさ」
いろいろな地方の方言を混ぜて使うしゃべり方が特徴のこの子は、生徒会書記の赤沢栗(アカザワ クリ)。
書記というだけあって、その整った綺麗な字は書道の先生もうならせる。
最近のマイブームな語尾は「べさ」とか「だべ」らしいけど、まぁ知ったこっちゃない。
栗という名前にふさわしい茶色のボブカットの髪がふわふわ揺れる。
「くーちゃんは今日もお説教?」
ちなみにくーちゃんとは空也のことだ。
あれをそういう風に呼ぼうとも思わないけど。


