空也が明らかに目を泳がせながらわざとらしく口笛を吹く。
もうそれは自分から犯人だと言っているようなものだ。
「上代…。職員室に来い」
「え、えぇっ、待てよ千春ちゃん!」
「誰が千春ちゃんだ。教師をそんな風に呼ぶんじゃない」
整った美しい顔を鬼のようにぎらつかせてそんなことを言うものだから、怒られていない私までびくびくしてしまう。
そんな山原先生がこっちを振り向くので、思わず体が強張った。
「三枝、いつも悪いな。こいつのお守りばかり任せて」
「いえ、上司のお守りは部下の仕事ですから」
「おいっ、誰が誰にお守りされてんだよ!」
「黙れ上代。下校時刻までみっちり説教してやるからな」
何か必死で叫んで助けを求めている空也を置いて、私はその場を離れた。
後ろから山原先生の必殺技、教科書(世界史の)ハリセンの音が聞こえてきたことは言うまでも無い。


