ガチャリ、 なるべく静かに鍵を開けて扉を閉めるのは、もう癖のようなもの。 玄関に鞄を置くと、 ヒタヒタと足音をたてながら 台所の棚からグラスを取り出す。水道のジャグチを捻ると 透明なガラスへと吸い込まれていった。 ひんやりと喉に通るものを一気に飲み干してグラスを置くと リビングには、ジャグチからぽたぽたと垂れる音だけが響いている… キィー リビングの扉が後ろで開く音が微かに聞こえるのは、きっと気のせいじゃない。 「今帰って来たのか」 「………」