本殿の中は狭く、小さかった。

入ってすぐ目の前に、祭壇があった。

その中心にあるはずのご神体の鏡は、すでに無くなっていた。

「神社の管理だけは、ちゃんとしていたみたいですが…ここは手薄だったみたいですね」

顎に手を当て、九門は顔をしかめた。

確かにご神体を祀っているのに、外は扉の鍵と南京錠のみ。

あまりに古くて、簡易な『封印』だった。

「―行きましょう、九曜」

「えっ? もう良いんですか?」

「後は警察の人の役目です。私達は何もできませんよ」

そう言われると、頷くしかなかった。

「はい…分かりました」

九門はこの状態を九曜に見せたかったのだ。

それを分かっていたからこそ、九曜も余計なことは言わない。

「そう言えば、どうです? 学校の方は?」

「えっ? ああ、楽しいですよ。いろんな人がいておもしろいです。部活もまあ…先輩達が個性豊かですから」

九曜が通学に一時間もかかる高校を選んだ時、祖父の九門だけが賛成してくれた。