この和風の邸は建てられた後、あまり手を加えていないので古く感じる。

「九曜。温かいお茶と何か食べ物を」

「はい」

二人は居間へ移動し、九曜は台所へと移動する。

すると着物姿の母がいた。

「母さん、上村のおじさんが来ているから、お茶と何か食べるものだって」

「あら、上村さんが来ているの。それじゃあお汁粉で良いわね」

早くに結婚し、九曜を産んだ母は美しく、若かった。

その美しさは父である九門に通じるところがあると、九曜は密かに思っていた。

しかし正反対の性格をしている為、遺伝の不思議さに首を傾げる。

「お餅と白玉、それに栗、何が良いかしら? 九曜ちゃんは何が良い?」

…雛に通じるほどの、愛らしい性格と笑顔の持ち主だったからだ。

父は婿養子で、神社の経営の方の仕事としている。

元より両親は生まれた時からの許婚で、それでも未だにラブラブな関係だった。

「…俺は餅。お祖父さまと上村のおじさんも餅で良いんじゃない?」