気のない返事を返し、九曜は本殿に到着した。

「ここで待っててください。すぐに祖父を呼んできます」

「頼むよ」

本殿の中に入ると、九曜の祖父・九門(くもん)は眼を閉じ、瞑想していた。

「お祖父さま、上村さまがいらっしゃいました」

「―上村さんが? 分かりました。今行きます」

六十を過ぎた九門は現役の神主で、その厳格な雰囲気と性格から、九曜は頭が上がらなかった。

灰色の宮司姿で立つ姿は凛々しく、九曜は祖父のことを尊敬していた。

「お待たせしました、上村さん。私にご用事があるとかで。よければ居間の方に移りませんか? ここは少々寒いですしね」

「それはありがたい。年老いた身にはこの寒さは厳しいですからね」

そうは言うが、上村はもうすぐ五十になるぐらいだ。

服も着込んでいるし、寒く感じるのは…彼の心の方だろうと、九曜は思ったが口には出さない。

本殿の裏側には住居がある。

和の屋敷で、かなり古い。