何百年も経つのに魔鬼はその姿を変えず、鏡の中から真っ直ぐに九曜を見つめてきたのだ。

あまりの恐怖に、本殿から九曜は飛び出してしまった。

―そう、魔鬼は未だに欲しているのだ。

九曜の血筋を。

アレからというもの、上村の神社からは遠ざかるようにしていた。

だが今、その鏡はいずこかへ行ってしまった。

そのことを惜しむべきか喜ぶべきか、九曜は悩んでいた。

「もしどこかで封印が解かれたら…」

魔鬼はやってくるだろうか? 

…この土地へ再び。

「…それは流石に勘弁だな」

あの学院の封印ですら、胆が冷えた。

もしも魔鬼が現れ出たとして、いくらオカルト研究部の部員達でも封じるのは不可能に近い。

だから口には出せないが、思ってしまう。

あの鏡が日本国内ではなく、外国へ持って行ってしまえば…と。

遠い異国の土地ならば、流石の魔鬼も…。