しかしそれは家族を顧みないほどに、だ。

そのことを面白く思わなかったのは妻だけではなく、息子もそうだった。

そのせいで息子は父親の死をキッカケに、神社を手放そうとすらした。

しかしそれは彼が上村の血を引いている以上、不可能なことだ。

あの鏡には、魔鬼(まき)が封じられていた。

数百年ほど昔、この土地に一匹の魔鬼と呼ばれる異形のモノが現れた。

それは九曜の血筋に惹かれてきたのだが、目的は力の強いモノを喰らう為だった。

当時から神社の神主をしていた九曜の先祖と、上村の先祖は力を合わせ、魔鬼を鏡に封じ込めた。

上村家はその後、鏡をご神体として扱うことになった。

魔鬼を鏡に封じ続けられるのは、上村の血筋のみ。

ゆえに耐えることと、この土地から離れることは許されず、何百年もその因縁は続いてきた。

しかしそれが破られた今、あの鏡に封じられていた魔鬼はどうなる?

三年前、九曜はあの鏡の中にいる魔鬼を視た。