「あっ…」

思わず九曜は絶句してしまった。

「まっ、それが彼の選んだことならば、私達が口を挟めることではないですよ。今後どうなろうともね」

「…そう、ですね」

厳しい表情で語る祖父から、九曜は顔をそむけた。

その後は特に会話もなく、神社へ帰り着いた。

九門は本殿へ行き、九曜は邸に帰った。

自室へ戻り、今日のことを思い出す。

―上村家が管理するご神体の鏡は、普通の鏡ではない。

作られたのは四百年ほど前だが、作りも質素で、一目で高価な物だとは分かりにくい。

しかしそれでも上村家にとっては、重要な物だった。

それを盗まれても、現管理者はあまり落ち込んだ様子を見せなかった。

「でもアレが盗まれたら…どうなるんだ?」

九曜は険しい顔で、三年前のことを思い出す。

三年前、前管理者が病気で亡くなり、一時騒ぎになった。

今の管理者の父親だった彼は、ご神体を守ることに尽力を注いでいた。