とっさに、一生懸命考えながら話す龍雄…
その額にはうっすらと冷や汗のようなものが浮かんでいる。
「わかった。茜は友達になりたいと言っていたから、そうする。
その内にキスはしてもいいのだな。」
別に龍雄が良し悪しを決めるわけではないが、
今の真輔は龍雄の言葉が欲しい。
いつもなら勝手に行動する真輔も、
部屋でいきなり沸き起こった感情に、
遅い思春期の到来に戸惑っていた。
嘘のような話だが…
真輔にとって異性を意識した初めての経験だったのだ。
おばあちゃんっ子の真輔、
ひ弱だったから全体の成長が遅かった真輔、
まともに登校していれば、
小学校の五・六年で性の目覚めについて学ぶところだが…
中学校でも休みが多かった。
肝心なとき、保健・体育の時間は保健室で寝ていた。
要するに、当然学ぶべきときに、そこにいなかった真輔、
祖父母との生活の中で異性の体について、さして興味も持たず、
何も感じずに高校生になっていた真輔。
初めて体験した思春期の感情だ。
本の上での知識としてはあっても、実感はなかった真輔が
やっと普通の男になったというわけだ。 了

