茜と百合子は、まともに話をするのは初めて、と言うのに、
完全に意気投合している。
「真輔君、分かった。
ラケットは向こうで借りられるから…
私と吉沢さんはマイラケットね。
汗をかくから着替えを忘れたら駄目よ。」
いつの間にか、いつものような、
姉のような口調で真輔に話して、帰って行った。
「大丈夫だ、真輔。
俺もテニスは学校で一・二度しただけだから…
誰でも初めは初心者だ。
それにしても… 川崎さん、元気になって良かったな。」
「でも、小田切さん、どうかしたのですか。
なんだか元気が無いみたい。
何も話さないし…
小田切さん、テニス、嫌いですか。」
真輔はチラっと吉沢百合子を見たが、
そのまま龍雄の病室へと向った。
「百合ちゃん、
真輔は運動らしいことをしたことが無いから、返事が出来ないのだよ。
体が弱かったから…
だから俺たちはさりげなくしていることが一番だよ。
あいつ、運動神経は特別に良いから、すぐに覚えるさ。
ただしんどそうな表情をしたら気をつけてやらないと、
むきになってやると大変だ。
川崎さんもそう思って週二回と言ったのではないかなあ。」
真輔においてかれそうになり、あわてて後についているが、
二人なりに真輔の無口の真実を…
彼らなりの真実を囁いている。

