ズボンははいているものの、
シャツを羽織っただけのような、
だらしのない格好をした男が茜の肩を抱きながら出てきた。
茜は… 泣き腫らした目をして下を向いていた。
やはり遅かったか。
真輔の風が一瞬にして止まった。
茜は… 目の前に真輔の姿を見て、
恐怖の入り混じった慄きの顔をして…
全身の力で男の手を振り払った。
「いやぁぁぁ。」
泣き叫びながら茜は無我夢中で走り出している。
「茜、もう大丈夫だから、逃げるなよ。」
真輔は慌てて追いかけながら茜に呼びかけている。
「お前は許さん。」
栄作は、酒を飲んでいるような赤い顔をして、
俺の前に立ちはだかるな、と睨んでいる男を、
一言そう言ったかと思うと、
持っていたステッキで男の股間をついた。
剣道の突き、を…
全神経を集中させて、気合と共に突いた。
「トォー。」
「ウオォーォォ ォ。」
男は、敢えて言うならば、獣のような声を発して、
飛び跳ねるような格好をしながら地面に倒れてのたうち回っている。
羽織っていたシャツは飛び、
不細工なメタボ体型を、
陸に上がった【とど】のように
腹を地面にこすり付けてのたうっている。
醜い老人の最後のあがき、か。

