ドン!!

隆の背中に、顔面をぶつけた。

「いったぁ〜い」

特別高くもないけれど、鼻が痛い。

さすりながら文句を言ってやろうと、隆を睨めていたら、

「まだ、考えてたの?」

振り返った、笑顔の隆にそう言われた。

「別に」

文句のひとつでも言ってやりたいのに、笑顔を見ると言えなくなる。

プイっと横を向いて、素っ気なく答えた。

「そういうのはさ。
桜見ながら、おいしいものでも食べながら…。
考えてみない?」

『おいしいもの』

その言葉に反応して、ぱあっと笑顔になるあたし。

それを見て、クスッっと笑う隆。

しまった!

あたし、食べものにつられちゃった!?

食い意地張ってるとか、思われたかなあ…?

落ち込む。

クルクル変わる自分の気持ちに合わせて、表情も変わっているに違いない。

そんなあたしを見て、隆が言った、言葉。

『莉奈見てると、飽きない』

『犬みたいで、かわいい』

だった…。

そうか、あたしってば、恋人じゃなくてペット感覚だったんだね…。

はあ…。
ため息。