拗ねたあたしに、投げかけた隆の言葉。

「だって…。
覚えてないんでしょ?!」

その問いかけに、あたしは立ち止まってしまう。

「何を?」

隆を見上げて、問い返すけれど…。

その質問には答えずに、

「行こう」

また、手を引いて歩き出した。

「隆!?」

隆の言葉が。

隆の行動が。

意味不明。

何をしたいのか。

何を言いたいのか。

全然分からない…。

さっきの言葉が、どんな意味を持つのか、もう一度聞いてみたいのに。

できない、あたし。

手を引いて歩く隆は、確実にどこかへ連れて行こうとしている。

『覚えてない…?』

どこかで、会ったことあるのかな?

例えば、すごく幼い頃…。

とか!?

ありがちな話しだけれど、『隆』という名前にも、『隆』の存在にも、まるで心当たりがない。

高校になって、初めて出会ったんじゃないのかな?

その前に、出会ってる!?

誰だろう…?

隆は一体…。

誰なんだろう…?

頭の中、クエスチョンマーク『?』が交錯する。


早足で歩いていた隆が、フッと足を緩めた。

考えごとをしていたあたしは、それに気がつかなくて…。