手をつないでいるのに、一歩後ろを歩いている、あたし。

隆の歩調に、合わせられないよ。

この微妙な距離が、ふたりの関係を象徴している気がする。

恋人じゃない。
友達でもない。

隆以外に、こうして一緒に出かける男友達なんていない。

誘ってくれたのが隆じゃなかったら、多分断ってた。

今頃あたしは家にいて、ゴロゴロしていたに違いない。

友達以上、恋人未満。
中途半端なふたり…。

「なんで、誘ったの?」

急に知りたくなった。

小走りで駆け寄り、隣に並んだ隆にそう声をかけた。

「え?」

突然の質問に、『うーん…』と考える仕種を見せる隆。

空を見上げながら、答えを探しているみたい。

キレイな横顔。

思わず見とれてしまうけれど、沈黙には耐えられない。

「…………」

あたしは、答えを聞くのが急に怖くなって、隆から目を逸らした。

「莉奈と、この景色を見たら、キレイだろうな…と思ったから?」

目線を満開の桜に向けたまま、隆は答える。

その言葉に、あたしも桜を見上げた。

あたしに向かって吹く風が、すごく心地いい。


「本当にキレイだね」


あたしはもう一度呟いた。