「莉奈。好きだ」

耳元で隆は囁く。

吐息がくすぐったくて。

さっきよりも速く、強く。
胸のドキドキは打ち付ける。

胸が苦しくて、呼吸できないくらい。

「俺は俺として。
莉奈のことが好きなんだ」

残された前世の記憶。
果たされなかった約束。

いくつもの時代を、すれ違い、ここでようやく同年代の男女として巡り逢えた。

「莉奈の気持ちが知りたい」

「………」

目を閉じて、考えた。

………。

「あたしは…」

『千、愛している…』

脳裏に蘇る、記憶。
胸の中、溢れ出す感情。

「すき…」

小さく呟いた。

何度も何度も。
この腕に抱きたいと願った。

けれど、そうすることはできなかった。

一度抱きしめてしまえば、二度と離したくなくなるから。

お互いの親・兄弟を苦しめても、一緒にいたい。
そう願ってしまうから。

「隆。あたしも。
隆のことが好き」

もう一度、失うのが怖くて。
消えてゆくのが怖くて。

言い出せずにいた、想い。
思い出せずにいた、記憶。

振り向いて、あたしは自分の気持ちを隆に告げた。

腕を伸ばし、隆を抱きしめる。

「もうどこにも、いかないて…」

願いを込めて。