閉じていた瞳を、ゆっくり開ける。

涙で、頬が濡れていた。

そして、はっきりした視界の中に、悲しい顔をしてあたしを見下ろしている隆が飛び込んできた。

「たかし…」

静かに、声をかける。

「ん?」

隆を見ていると、胸が苦しくて、あたしは思わず目を反らしてしまう。

そうして初めて、自分が隆のひざ枕で横になっていたことに気付く。

慌てて、上半身を起こした。

隆に背を向けたまま。
かける言葉に悩んだ。

何か言いたいのに。
何も言えない自分がいる。

「莉奈は、覚えてないよね?」

悲しそうな呟き。

「だけど俺には、残ってた。
莉奈に会った時、すぐに分かったよ」

「………」

「思い出して欲しかった、わけじゃない。

ただ、この風景を。
一緒に見たかった。

それだけ、なんだよ…」

隆の言葉に。
振り向いて、抱きしめたい。

そんな衝動にかられながらも、あたしは、なんと言ったらいいのかわからなくて、身動きできないでいた。

スッ。
と、背後から伸びた腕に、あたしは抱きしめらる。

ドクン。
跳ね上がる心臓。

ドクン・ドクン。
高鳴る胸の鼓動。